映画

『ブレイキング・バッド』に出てくる猛毒ガス「リン化水素」で人は死ぬのか?

『ブレイキング・バッド』シーズン1の第1話で次のような場面がある。

主人公ウォルターが拳銃を持った男2人に囲まれながらメス(覚醒剤)の製造工程を説明するシーンで、熱したお湯の中に赤い粉(赤リン)をぶっかけ、その化学反応によって生成された毒ガスで敵2人を退治するという描写があった。

フライパンで熱したお湯の中に赤い粉(赤リン)をぶっかけているのがわかる。

 

 

何かの化学反応によって一瞬燃え上がり、毒ガスが発生する。

 

 

男2人を10秒くらい車内に閉じ込めると、二人とも倒れ込んでしまった。

 

 

 

ウォルターは相方(ジェシーピンクマン)にどうやって倒したのか尋ねられるとこう答える。

「蒸気中の赤リンを加熱すると『リン化水素』が発生する。神経ガスだ。吸ったらまずい。」

 

どうやら男2人がほんの一瞬で倒れてしまったのは神経ガス「リン化水素」を摂取してしまったからである。あまり聞きなれない言葉だがかなり危険なガスだという。

そこで今回、このリン化水素がどのくらい危険なのか。どのくらいの量を摂取したら死んでしまうのか。リン化水素の発生条件についてそれぞれ調べてみた。

 

  リン化水素はどれほど危険なのか?

リン化水素の致死量と副作用

リン化水素(別名 : ホスフィン)は非常に危険なガスだというが、どのくらいの量を摂取したら死んでしまうのだろうか。濃度別にどのような作用が起こるかまとめてみた。

濃度 [ppm] 作 用
1.5 〜 3.0
290 〜 430
400 〜 600
2000
人が感知できる。
1時間で生命危機
30〜1時間で死亡。
短時間で死亡

 

人体への影響 ; 粘膜刺激症状がないため急性致死中毒が起こりやすい。食中毒やチフスに似た症状を呈する。慢性中毒では骨が壊れやすくなるなどリン中毒と同じ症状を呈するほか、言語・視覚・歩行障害をまねく。

引用 : http://www.komyokk.co.jp/pdata/gpdf/Phosphine_0.pdf

この説明を見る限りものすごく恐ろしい化学物質である。

リン化水素にやられた二人の男(エミリオ、クレイジーエイト)のうち、エミリオはすぐに死んでしまったことから290〜2000ほど摂取してしまったのだろう。

クレイジーエイトは歩けるだけの力は残っていたが、最初は視覚・歩行障害をまねいていた(勝手に木にぶつかったシーン)。

 

リン化水素の発生条件

次に発生条件を確認したい。なぜならブレイキング・バッドのドラマではいとも簡単に生成していたが、本当に沸騰した水に赤リンをかけるだけで発生するのか非常に疑問である。

ドラマや映画は誇張表現をしている可能性があるので独自に調査してみた。

リン化水素の発生条件

水にヨウ化水素を加え、その水蒸気に赤リンが触れると発火しリン化水素が発生する。ただし、260度の熱を加えないと赤リンは発火しない

ウォルターのシーンではヨウ化水素を入れる場面はなかった。また、260度の熱で沸騰させていたかも曖昧なところである。あの毒ガスのシーンは映画やドラマだからこその誇張表現の可能性が高い。

 

  感想

『ブレイキング・バッド』の面白要素の一つである、化学の知識をフルに活用した危機回避シーン。今回のリン化水素で敵二人を倒す場面はかなり面白かった。

ドラマ上の都合でちょっと誇張している部分はあるが、見ている側としては「うわ〜、化学でこんなこともできるんだ!!」と新たな発見が得られる。(別に使うわけではないよ笑)

これの他にも化学の知識をフル活用した奇天烈シーンがたくさんあるので、それはまた別の記事で紹介していくことにする。

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